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2013年1月

SMG~CAN(米国)Q&Aの14章公開


 今回はQ&A14章「年齢が上の子どもや大人の場面緘黙について」を公開します。翻訳は、Anne(特別支援教育支援員)、虹橋(経験者)、けいこ(心理士)が行い、Jasmine(経験者・特別支援教育指導員)がチェックしました。

(米国のSMG~CANのサイトにある"Ask the Doc Archives" のQ&Aを翻訳し公開しています)。
http://www.selectivemutism.org/find-help/ask-the-doc-archives
"Ask the Doc Archives" については、「Knet News 2011年5月」にあります。
Knet News 2011年5月へリンク

 年齢が上の子どもや成人の場面緘黙についての資料は、海外でも少ないようです。Knet資料No.14「場面緘黙児が小学校中学年以上や十代のとき」には、子どもが8歳から9歳になると、場面緘黙の症状改善がなされにくくなることや、治療や取り組みに本人を積極的に関わらせ主導権を持たせることの必要性について書かれています。ぜひご参照ください。


 自我の意識が高まる小学校高学年から中学卒業までの時期は、学校内での発話を増すことを目標にするよりも、今話せている場面でのコミュニケーションの維持をこころがける方が適切な場合も少なくありません。

 学校は家庭と協力して、学習面での不利を少なくし、発話以外の形式での評価や活動参加を検討しましょう。周囲の理解や支援を受けずに長期的にストレス状況におかれると、うつや不登校のリスクが高まります。クラスでの孤立やいじめが起きないように環境を整えることが大切です。
 (ただし、小さなトラブルは、子どもが社交スキルや問題解決スキルを学ぶ機会でもあります。場面緘黙がない子どもでも、相手に自分の言い分を主張できなかったり、ひとこと謝ることができないことはよくあることと思います。トラブルが生じるのを未然に防ぐことだけにエネルギーを注ぐのでは、子どもの成長の機会を奪うことにもなります。トラブルが起きたときこそ、学ぶチャンスです。相手に言われたことをどう受け止め、どう対処すればよいのか、何をどんな言い方で相手に伝えることができるか、伝言やメールや手紙などのコミュニケーションを、親や先生がサポートしてあげましょう。思春期に入ると、子どもは親に悩みを話さなくなり、親も教師も子ども同士の関係に介入するのが難しくなるものです。ぜひ思春期に入るまでに、トラブルがあったときのサポートの道筋をつけておきたいものです。)

 家庭が安心してくつろげる場所となるようにこころがけましょう。家事の手伝い、親戚との交流、買い物や外食、交通機関の利用など、まずは家族と共に社会的体験の自信をつけておきましょう。学校外での遊びや趣味の交流、スポーツや学習を充実させることもよいことです。

 年齢が上になってから場面緘黙を発症した場合は、別の疾患の一症状である可能性もあります。幼い時期に発症し、家庭の中でも年齢相応の自然な会話ができにくい場合は、自閉症スペクトラム障害の特性、境界知能、話し言葉やコミュニケーションの困難を併せもっている場合があります。
 幼い時期に場面緘黙を発症し、症状を成人まで持ち越してしまった場合は、「社交不安障害」に詳しい医師や心理士にかかりましょう。場面緘黙の症状は、「人から見られること」「人から聞かれること」の恐怖症であり、場面緘黙の子どもの90パーセント以上の人が社交不安障害(SAD)をもつという研究があります。場面緘黙だけでなく、辛い体験や孤立感のために、うつやPTSDや強迫性障害など他の症状を併発していないかを押さえておくことも大切です。

 場面緘黙を克服して、様々な職業や活動に携わっている方や子育てをされている方がいます。教師や特別支援教育指導員、言語聴覚士やカウンセラー、ソーシャルワーカーなどの教育福祉関係の仕事、医療関係の事務や一般事務、ウェブデザインや工業デザイン制作、情報誌ライターや翻訳業、食料品・工業製品の生産工場、飲食店やクリーニング店など販売業に携わっておられる方がおられます。
 年齢と共に場面緘黙の症状を克服しても、人と話す機会が少なかったために会話の苦手意識を残す場合もあります。場面緘黙の経験者が集う会や趣味の会に参加して、会話の苦手を克服しようとする緘黙経験者もおられます。
 かんもくネットのおしゃべり会には、自分の場面緘黙の体験を語ることで、子どもたちや保護者の支援をしたいと考える方の参加が増えています。経験者の話やアドバイスは、子どもたちの視点から物事が見られるという点でたいへん学ぶことが大きいです。 経験者にとっても、自分の経験を人に語ることは、今の自分を確認し新しい自分を発見する機会になりえるでしょう。