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2012年8月25日

SMG~CAN(米国)Q&Aの7章公開

 米国のSMG~CANのサイトにある"Ask the Doc Archives" のQ&Aを翻訳し公開していく予定です。
http://www.selectivemutism.org/find-help/ask-the-doc-archives
"Ask the Doc Archives" については、「Knet News 2011年5月」にあります。
Knet News 2011年5月へリンク

 今回は7章を順次公開していきます。7章は場面緘黙への薬物療法についてのQ&Aです。7章の翻訳は、けいこ(心理士)、最終チェックをみく(Knet事務局・保護者)が行いました。

 SMG~CANのエリザ・シポンプラム博士の実践では、スモールステップの取り組み(行動療法)が順調に進むように、お薬で不安を下げながら取り組む方法がもっとも効果的だそうです。お薬は5歳以上で用いられ、幼い子どもは思春期以降の子どもよりも少量の処方で効果が現れるため、全体量にすると少なくてすむと博士は言います。

 本文では、処方量や増量、また減薬の方法が詳しく紹介されます。もちろん、文献の情報だけで実際の処方を行ってはなりません。しかし、日本でも場面緘黙の薬物療法への関心が高まり、研究が進むことを願って、これらの情報を公開したいと思います。

 SSRIには、フルオキセチン(プロザック)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)などがあります。米国ではSSRIの中でもプロザックが使われますが、この薬は日本では未承認薬です。

 精神薬は同じ量でも種類によって強さ(力価)が異なります。本文のプロザックの用量については、下記の「米国の児童における一般的な用量」を参考に検討をつけてお読みください。Q&Aの本文と比較すると、エリザ・シポンブラム博士の処方開始量がいかに微量で、いかに少量ずつ増量するかおわかりいただけると思います。


薬名 体重20kgで換算した児童の1日用量 児童への一般的最大量
フルオキセチン(プロザック)  5~14mg 40mg
セルトラリン(ジェイゾロフト) 30~60mg   200mg
フルボキサミン
(ルボックス、デプロメール)
30~90mg 300mg
パロキセチン(パキシル) 5~14mg 30mg

ティモシーEウィンズ著・岡田俊 監訳監修(2006)「子どもの精神科薬物療法」を参考に換算した)

 日本では、場面緘黙の治療において積極的にSSRIを用いる話はほとんど聞いたことがありません。思春期になり鬱状態や不登校などになった場面緘黙児に対して、SSRIを用いる場合があると聞きます。薬の助けも借りて、大きな不安の渦や張り詰めるような緊張から幾分かでも解放されて、思春期の難しい時期をなんとか通過することは、検討すべき選択肢の一つと思います。ただ、薬は不安を下げるだけで場面緘黙の症状に直接効くわけではありません。発話以外のコミュニケーション体験や発話できる範囲が広がらなければ、なかなか自信や対処力がつかないからです。

 薬には副作用があるため、小児には慎重に用いられなければなりません。長期の服用による影響についてもまだ研究途上のようです。SSRIは米国でよく用いられますが、英国では小児への薬物療法あまり行われないようです。

 しかし、英国では、教育的ニーズがある子どもは診断の有無にかかわらず個人や小グループでの特別支援教育を受けることが多くできるようです。日本では3~4%に対して、英国では約2割の子どもたちが特別支援教育を受けているそうです。
 
 日本でも就学前に幼稚園(保育園)に支援者や保護者がお願いすれば、比較的自由に個人や小グループ、別室での遊びを設定してくださる場合が多いです。しかし、小学校入学後は、校内での個別的配慮や行動療法的アプローチは非常に設定が難しいのが現状です。 日本の学校では、能力が違っていても全員に同じ課題をさせ、全員に同じ動作を求める授業や全員参加の行事が多いです。英国の学校のように子どもに合わせた課題を与えたり、行事(運動会やキャンプなど)に参加しない選択肢を選ぶことができません。 多くの場合、日本の子どもは自分だけ異なることをすることを嫌います。他の児童と異なることをすれば、目立って注目されるからです。

 「例えば、学校で友達と話せない子ども、家庭外で大人と話せない子どもは、重度の場面緘黙です。この場合、私は薬物療法と行動療法の併用をお勧めすることが多いです。(目次7Q5より)」

 重度の場面緘黙の場合、不安が非常に高すぎて、なかなかスモールステップの取り組みがすすみません。日本でも少量のSSRIの処方が研究され、子どもの症状に応じて調整してくださるような医師が現れる事を願います。