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2011年10月19日

SMQ-R (場面緘黙質問票)について

質問項目は、Christopher A.Kearney,大石幸二氏監訳『先生とできる場面緘黙の子どもの支援』学苑社(2015)に掲載されています。(2015.4加筆)

 SMQ-R は、保護者が16項目の質問に答えることで、子どもの場面緘黙の症状の程度を調べることができる「場面緘黙質問票」です。カルフォルニア大学のリンゼイ・バーグマン博士らが作成したSMQ(Selective Mutism questionnaire)17項目をKnetが翻訳し、日本語版として16項目にしました。翻訳にあっては、バーグマン博士の指示に従い、正式な翻訳手続きを踏みました。SMQは3才~11才の子どもに実施され、尺度の信頼性と妥当性が確認されています(Bergman et al,2008)。

 場面緘黙は、過去にはまれな症状とされてきましたが、近年の研究では0.7%とする研究(Bergman et al,2002;Elizur et al2003)もあります。これまで症状を測る標準的な尺度がなく、そのために発症率、状態像、治療の有効性等の研究にあたって、共通認識をつくることが困難でした。共通の尺度がなかったために、研究によって状態が異なる子どもを研究対象にしてる可能性があったり、効果があるとされた治療や取り組みであっても、場面緘黙の症状がどの程度軽減されたのか明確でないのです。


SMQ-Rの使い方

 SMQ-Rは「幼稚園や学校」「家庭や家族」「社会的状況(学校の外)」の3つから構成されています。

 子どもに場面緘黙の症状がある場合、保護者や教師は、「子どもが学校で話せないこと」だけに注目しがちです。しかし、「家庭や家族」「社会的状況(学校の外)」でどれだけ話せているかに目を向けることが大切です。表1のグラフは、場面緘黙の子どもの群と、場面緘黙でない不安障害の子どもの群のSMQの1項目の得点の平均値を示しています。

表1


 場面緘黙の取り組みは、まず「家庭や家族」との発話を豊かにし、「社会的状況(学校の外)」でのコミュニケーションを広げ、それを「幼稚園や学校」の発話へと移していくことが基本です。時期をあけてSMQ-Rをつけることによって、治療や取り組みの進展状況を、保護者や援助者が確認することができるでしょう。

 ただし、SMQ-Rは発話のみに注目した尺度であることに注意しましょう。場面緘黙の治療や取り組みは、発話のみに注目せず、子どもの不安の状態の注目することが必要だからです。子どもがその状況に楽しんで参加できているか、自由に動けているか、うなづきやジェスチャーなど非言語コミュニケーションができているか、筆談ができるか、(相手と直接話せていなくても)その人に声を聞かれても平気かどうか等、発話に至る前の段階に着眼することも重要です。
 

Bergman RL, Piacentini J, McCracken J.(2002)Prevalence and description of selective mutism in a school-based sample. J Am Acad Child Adolesc Psychiaty. 41,938–946.
Bergman RL, Keller ML, Piacentini J, Bergman AJ.(2008) The development and psychometric properties of the Selective Mutism Questionnaire. J Clin Child Adolesc Psychol. 37,456-464.
Elizur Y, Perednik R.(2003)Prevalence and description of selective mutism in immigrant and native families: a controlled study.J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 42,1451-1459.