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2008年6月27日 クラスで場面緘黙の子どもへの対応を話し合う時 かんもくネット事務局 角田圭子(臨床心理士) ●『りかちゃんがわらった』を読んで 今年3月、場面緘黙症Journalで、鹿島和夫『りかちゃんがわらった』ポプラ社という写真絵本が、紹介されていました。 http://smjournal.blog44.fc2.com/blog-entry-306.html
私も、図書館で借りて読みました。 本の内容 りかちゃんは、いつもひとりぼっち。しゃべらないし、あそばないし、ちっともわらいません。りかちゃんとなかよくしたい! クラスのみんなは、りかちゃんのことをいっしょうけんめいかんがえます。しゃべらなかった…あそばなかった…いつもひとりぼっちの少女がクラスメートのハートにふれて、どんどんかわっていく! カメラが追った感動のドキュメント絵本。 (「BOOK」データベースより) | この絵本のテーマは、「学級=学びあうところ」です。 神戸のある小学校の1年生担任の鹿島先生が、実際にクラスで撮り続けた子どもたちの写真をもとに、お話がまとめられています。 「りかちゃんに、みんなとなかよくしてもらうには、どうしたらいいのかな?」 学級会で、クラスの子どもたちがいろいろ意見を出し、話しあい、りかちゃんのことを一所懸命考えます。 そして、りかちゃんを遊びに誘ったり、じゃんけんしたり、絵を手伝ってあげたり、算数のプリントの答を教えてあげたり、あやとりをしたり…するうちに、りかちゃんの表情が少しずつ変わり、反応が増え、いっしょに遊べるようになり、やがて話せるようになっていきます。 写真から、りかちゃんの表情が少しずつ変わっていく様子がとてもよくわかります。後半は、表情が生き生きしています。とってもいい表情。 あとがきには、「りかちゃんに関わったこどもたちは、りかちゃんの立場に立って、優しくする好意を自然に学んでいくことになります」とあります。 子ども達が互いに学び、考え、人と関わろうと思うことで、交流がうまれ、お互いに成長していくお話です。 ●この本を読んでいて気になるところ… 担任の鹿島先生は、2学期の学級会で次のような他児の作文を読んで、 学級会の話し合いを始めています。 りかちゃん おかべあや りかちゃんは、 なんで おしゃべりが きらいなんだろう。 … りかちゃんの めあては、 こんどから よく しゃべるように なろう、 それから、ぎゅうにゅうを のむことです。 あやちゃんは、りかちゃんのことが、とても気になっているのでしょう。 りかちゃんにお話しして欲しい、りかちゃんといっしょに遊びたい、 りかちゃんに変わってほしいと、願っているのでしょう。 そんな優しい気持ちを素直に作文にしたのでしょう。 りかちゃんは、この学級会の場にいたのでしょうか。 あやちゃんの作文を聞いて、りかちゃんはどう思ったでしょう。 りかちゃんが話せたなら、 あやちゃんの作文を聞いて、自分の気持ちを伝えたでしょう。 こう言ったかもしれません。 「おしゃべりが きらいなんじゃないよ」 「わざと はなさないんじゃないよ」 「どうしても のどがしまって ぎゅうにゅうがのめないんだよ」 でも…りかちゃんは自分の思いを直接伝えることができません。 りかちゃんの思いが、他児に届けられない学級会の話し合い。 これでは、話し合いは一方的なものではないでしょうか。 りかちゃんへの他児の思いをクラスで取り上げるだけでなく、 緘黙の子どもの思いもクラスの子ども達に伝えたいです。 幸い、この話し合いの後に様々な展開があり、結果的にこの学級会は、りかちゃんにとってプラスに働きました。本には掲載されていない、鹿島先生のサポートがたくさんあったのでしょう。しかし、この絵本の一部を安易に真似て、緘黙の子どもを傷つけてしまうこともあるのではと危惧します。 子どもたちが考えた、りかちゃんへの関わり方が、りかちゃんにマイナスに作用せず、りかちゃんがそれに応じることができるものでよかった…。りかちゃんが完全主義的なところがない子でよかった。プライドがとても高い子でなくてよかった。牛乳が嫌いな子でなくてよかった。文章を組み立てて話す能力が高い子でよかった。お友だちに「ちゃんと おしゃべりしないと だめよ」と言われても、落ちこまないでよかった。話せた時、お友だちにおしゃべりしてることを指摘されても、緊張しなくてよかった…。 お話の中のりかちゃんが話す台詞も、どうもぴったりきません…。 この絵本のお話は、教師とクラスの子どもの視点で描かれているようです。 (著者の鹿島先生、せっかくの絵本にケチをつけるようで申し訳ありません。) ●クラスで場面緘黙の子どもへの対応を話し合う時 (教師と保護者で打ち合わせをする際、プリントアウトしてご利用下さい。) 「なぜ はなさないの」「はなさないと ダメだよ」… 子ども達は、疑問に思ったことを、そのまま言います。悪気はなく、ただ不思議に思ったことを口にしただけの場合も多いでしょう。しかし、そんなことばは、緘黙の子どもにプレッシャーを与え、ますます子どもを萎縮させてしまうことが多いのです。そのような時は、クラスの子ども達に、緘黙の子どもがそのことばをどう受けとめるのか、教えてあげることが大切です。 クラス全体で緘黙の子どもの話をする時は、クラスの子ども達にどう話すか、教師と保護者で打ち合わせをしましょう。保護者は家庭で、「先生がみんなにお話したいって言われているのだけど、どうかな?」「こんなふうにクラスで話してもらうのは、いい?」などと子どもに了承をとります。その子が話し合いの場にいる時の方がいいのか、いない時の方がいいのかも、聞いてみましょう。 緘黙の子どもは、自分のことを話題にされることを怖く感じ、はじめは嫌がるかもしれません。しかし、クラスのみんなが自分のことを考えてくれることを心のどこかで望んでもいるでしょう。子どもの気持ちを大切に、慎重に話を進めます。 @先生から、子どもの状態を伝えます。 例えば… 「○ちゃんは わざと はなさないんじゃないんだよ」 「○ちゃんは ほんとうは じょうずに はなせます」 「がっこうでは まだ こえが でないだけだよ」 「はなそうとすると のどが ぎゅっとなります」 改めて理解の場を設けた時だけでなく、 「まだ ここでは こえが でにくいだけ」 「むし してるんじゃないよ」 ということは、折に触れて他児に伝えてあげて欲しいと思います。 Aクラスの子ども達が、その子の立場に立って考えるためのヒントが欲しいです。 他の人がどう感じるか想像したり、他の人の身になって考えさせることは、人への思いやりを育てる教育です。他の人は自分とは違う感じ方をすること、人はそれぞれ感じ方が異なることを学びます。子どもの学年やクラスの状態、緘黙の子どものクラスでの行動によって、話し方は様々です。 例えば… 「みんな だれでも にがてなことが あるよね」 「キンチョ−すると あなたのからだは どうなりますか」 「ハッピョウするとき ドキドキして こえがでにくくなったことは ありませんか」 「○ちゃんは じぶんでも なぜ こえがでないか わからないのです」 「○ちゃんは はなしかけられると とても うれしいと おもっています」 B先生から「して欲しくないこと」を伝えます。 例えば… 「『なぜ はなさないの』といわれると こまってしまいます」 「『しゃべらないと ダメだよ』といわれると かなしいきもちに なります」 「『あっ ○ちゃんが しゃべった』と いわれると よけいに のどが キンチョーしてしまいます」 Cそして、「して欲しいこと」を伝えたいです。 例えば… 「○ちゃんも みんなと なかよくしたいなと おもっています」 「あそびに さそってね」 「たくさん はなしかけてね」 鹿島先生のように「りかちゃんに、みんなとなかよくしてもらうには、どうしたらいいのかな?」と、クラスに問いかけるのもよいと思います。 ●クラスで話す時に役立つ資料 かんもくネット事務局のははさんのHPに、『クラスメート理解資料(園・低学年用)』があります。 「学校で話せない子ども達のために」 小学校低学年くらいの子どもたちに話す時に、この資料を使うもいいでしょう。子どもは耳で聞くだけでなく、目で見ることができる資料がある方が、理解しやすいからです。Excelでことばを修正できるようになっていますので、子どもの年令や状態、クラスの状況にあわせて、資料を作り替えることもできます。 低学年クラス理解向け絵本『なっちゃんの声と心とお友達』を、クラスで読んであげるのもいいでしょう。 かんもくネット著角田圭子編「場面緘黙Q&A」学苑社の、Q55「クラスの子どもに、子どもの状態について何と説明すればよいでしょうか?」に、高学年用の例が掲載されています。 |