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2008年5月25日

「場面緘黙の子どもの気持ちを知ってください」
 
教育ジャーナル2008年1月号に掲載された場面緘黙の特集記事を、会員の方より教えていただき読みました。記事には、緘黙の子どもたちの言えない思いがつまった「担任の先生へ」という資料が掲載されています。
この資料をなるべく多くの人に読んでほしいと思い、事務局より著者の井上賞子先生にウェブ公開をお願いしたところ、快く承諾してくださいました。
 
「担任の先生へ」 「お父さん、お母さんへ」 「心の声が聞こえますか?」
この3つの資料を、かんもくネットでウェブ公開します。
公開するにあたって、井上先生と相談して資料に背景をつけることになり、
蒲公英(たんぽぽ) 小手毬(こでまり) 勿忘草(わすれなぐさ)を描かせていただきました。
 

   緘黙の子どもたちの言えない思いが、多くの方に優しく伝わりますように。

                                        Knet事務局 はは(保護者)                          

資料掲載にあたって

はじめまして。島根県で小学校の教諭をしています。
ご縁があって、かんもくネットで以前作った資料を公開していただくことになりました。
どうぞよろしくお願いします。

私は場面緘黙の子ども達とご縁があるようで、短い期間に何人ものお子さんと出会いました。
担任として関わった子、通級教室で出会った子、どの子も本当に優しくて、外に向かってあげられない悲鳴で、自分を責めているかのように見えました。
一方で、彼女達(私が出あったお子さんはみんな女の子でした)をとりまく友達や私たち教師が、「自分は拒否されているのかも」「嫌われているのかも」と感じて関わりにとまどいを感じている実態も目の当たりにしました。

担任として関わったAさんが、卒業文集で「たくさん やさしくしてくれて、ありがとう。すぐにおれいがいえなくてごめんなさい。でも、うれしかったよ。」と書いたのを見て、泣き出した子がいました。
彼女の精一杯がこめられたこの言葉に、「こっちこそありがとうだよ」とAさんに抱きついた子もいました。
それを見て、この子達もつらかったのだと改めて痛感しました。自分達の中で話さなくなっていったAさんの姿に動揺し、「拒否されている」と傷ついて、「なぜ」の思いがAさんへの否定的な態度につながってしまった子もいたのだと思います。
文集を見て涙した子は、誰よりもAさんを気遣って、無反応だったころから声をかけ続けていた子でした。どんなに優しく接しても反応の返らないAさんに「自分のしていることは迷惑なのかな」「無駄なことをしているのかな」「なんでいつも知らん顔なんだろう」と苦しかったこと、「卒業文集を見て、言えなかっただけなんだ、こんなふうに思っていてくれたんだとわかって本当によかった」と当時感じた思いを、中学生になってから話してくれました。

場所や相手によって強い不安を持ってしまう場面緘黙の子ども達にとって、周囲のサポートは不可欠だと思います。
でも、周囲の子や教師や保護者を支えるのは、場面緘黙の子ども達が「感じていながら口に出して言えない思い」なのではないかと思いました。
場面緘黙の子を支える周囲の子や大人に、「平気なのではなく、話せないなかで苦しんでいる」ことや、「話せなくても感じている」ことが理解され、そして何より「あなたの思いは伝わっている」「届いている」ということを伝えることが、とても重要になって来るのではないかと思います。

そんな思いから作成したのが、3つ資料「担任の先生へ」「お父さん、お母さんへ」「心の声が聞こえますか」です。
当時、場面緘黙に関する資料は本当に少なく、ネットを通じて知り合った成人した皆さんからお話を聞かせていただいて、それらを元にして作りました。
つたない資料ではありますが、何かのお役に立てるのでしたら、幸いです。

                                                    井上賞子



「担任の先生へ」 PDFファイル 

この資料は『教育ジャーナル2008年1月号』に掲載されました。
『話せない』だけでない『私』を見つけてもらうことが、本当に嬉しかったこと、「違う」と言えないために、自分の思いでないことが誤解されて伝わっていくことが辛かったことなど、当事者の方から聞き取った内容をまとめて、手紙のような形式で書きました。
『教育ジャーナル』には載らなかった「先生に言われて嬉しかった言葉・悲しかった言葉」の原稿も、今回は最後のページに掲載しています。これも、成人された皆さんから聞き取った言葉を集めたものです。

「お父さん、お母さんへ」 PDFファイル

この資料は、お家の方へ当事者の子どもが語りかける形で作っています。
先生へのメッセージと重なる部分もありますが、家庭という話せる場におられる保護者のみなさんにわかってほしいことを中心に書いたものです。「居心地のいいこの場所を大切にしてほしい」「話せない自分の感じている思いを、家ではたくさん出させて欲しい」保護者の方に、こんな子どもたちの思いをお伝えできればと思って書きました。

「心の声が聞こえますか?」 PDFファイル

この資料は、以前からネットでsyoというハンドルネームで公開していました。
もともとは周囲の子ども達への啓発用に作ったものです。握り返せないときでも、つながれた手のぬくもりに支えられていたことを伝えたくて書きました。
「ひとやすみ」さんが絵をつけて下さったものが、以下のアドレスで公開されています。
http://wanderers.uzusionet.com/