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場面緘黙とは

言葉を話したり理解する能力はほぼ正常であるにもかかわらず、幼稚園・保育園や学校など社会的状況で声を出したり話したりすることができない状態を言います。体が思うように動かせない緘動(かんどう)という状態になることもあります声の出しにくさ、話しづらさは、場所やそこにいる人、活動内容によって違ってきます。また、すべての生活場面で話すことができない状態を全緘黙といいます。現在、日本では場面緘黙は心因性とされており、情緒障害教育の対象となっています。

海外では、場面緘黙は小児期の不安障害であり、「自分が話す様子を人から聞かれたり見られたりすることに怖れを感じる」恐怖症の一種ととらえ治療や支援を行なうという考えが主流となっています。また、原因については、おそらく不安になりやすい生まれつきの気質がベースとしてあり、そこに複合的な要因が影響していると考えられています。

これまでは、「場面緘黙は大人になれば治るもの」と考えられてきました。しかし、そのままにした場合、うつ的症状や不登校へとつながるケースも見られます。海外の資料によれば、たとえ発話ができるようになったとしても、成人後に社会不安障害などに悩まされることも多く、早い時期からの適切な対処の重要性が強調されています。

発症率は

調査によってばらつきはあるものの、アメリカでは「発症率は0.7%」とする説をとることが多いようです。 どの報告でも、男児よりも女児に多くみられるとあります。場面緘黙児は行動が抑制されており、たいへん大人しく見えます。そのため、たとえ本人が困っていたとしても、学校側が困るということが少ないために、場面緘黙であっても見落とされがちです。また、保護者も行動を抑制しがちな気質を持っていることが多いと言われており、学校に協力を求めることを控えがちと思われます。

診断基準は?

DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)では「選択性緘黙」という名称で記載されています。

  • 家などでは話すことができるにもかかわらず、ある特定の状況(例えば学校のように、話すことが求められる状況)では、一貫して話すことができない。
  • この疾患によって、子どもは、学業上、職業上の成績または社会的な交流の機会を持つことを、著しく阻害されている 。
  • このような状態が、少なくとも一ヶ月以上続いている。
    (これは、学校での最初の一ヶ月間に限定されない)
  • 話すことができないのは、その子がその社会的状況において必要とされている話し言葉を知らない、または、うまく話せないという理由からではない。
  • コミュニケーション障害(例えば、吃音症)ではうまく説明できない,また,広汎性発達障害、統合失調症またはその他の精神病性障害の経過中以外に起こるものである。

症状が似ているために、混同されやすい疾患があります。例えば、ショックな出来事が引き金になって全緘黙になる「心的外傷性緘黙」は区別するべきだとされます。「失語症」は、脳卒中や交通事故により脳の言語中枢にダメージを受けた結果、言葉の意味をとれない、わかっていても言葉にできない状態です。「ヒステリー性失声」は、ストレスやショックな出来事によって発声器官が麻痺する状態です。

場面緘黙は、恥ずかしがり屋のひどい状態であるとも言えますが、場面緘黙が恥ずかしがり屋と大きく異なる点は、症状が強く長期に渡って続くこと、そのために子どもが持っている様々な能力を十分に発揮できないということです。

喋ることができても小声だったり、答えるまでに時間を要したり、特定の相手とだけ話したりする状態の場合も、場面緘黙としてとらえて支援することが有効です。特に、回復の途上にある場合、子どもの状態が学校に理解されにくいことが多いため注意が必要です。

自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害PDDや学習障害LDとは異なります。しかし、場面緘黙児の中には「かなりの割合で発達障害を併発している」「構音障害や感覚統合の障害が見られる子どもがいる」等の報告があります。

DSMでの診断では、場面緘黙は、共通した症状でくくられる1つの障害とされています。しかし、厳密に言えば「場面緘黙」は「症状」をさしています。似た症状をもつ場合にも、それぞれの要因や特徴は大きく異なります。「話せない」という症状だけに注目せず、子どもの全体像をよく理解して、その子にあったアプローチをしていくことが重要です。

例えば、幼少期の発達がゆっくりで、自分を表現することに自信がもちにくい場合があります。また、感覚過敏や発達的なアンバランスのために、状況の読み取りや、人との関わりが苦手な場合もあります。また、発音や言語表現が苦手で、そうした失敗を怖れている場合がありますこうした要因が、それぞれ違った形で子どもの症状に影響しているのです

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)で場面緘黙の症状がある場合、DSM-WやICD10では「広汎性発達障害(以下、PDD)」の分類が上位診断となります。特に受動型PDDとの鑑別が困難な子どもがいるため、場面緘黙の症状がある子どもには、PDDの可能性も踏まえながら支援していくことが大切です。

この障害の名称について

DSMでは、1994年に診断名が” elective mutism”から、”selective mutism”に変わりました。”elective”という言葉には、緘黙児があたかも特定の場面で話さないことを「選んでいる」ような語感があり、心理学者ですらそう誤解しているような状況が広まっていたためです。自分の意志で話さないことを選んでいるわけではないことを示すために”selective”という用語が採用されました。

日本語版DSMでは「選択性緘黙」と表記されており、今後はこの名称が多く使われるのではないかと考えられます。しかし、「場面緘黙」「選択性緘黙」という名称が、様々な誤解を招いているケースもあり、症状を適切に表現する名称については、今後とも検討を要するように思われます。

障害か?個性か?

「障害」なのか「個性」なのか、疑問に思われる方もいます。診断を受け「障害」ととらえると、保護者や本人がこの状態の情報を得やすいこと、同じ状態の子どもが他にもいることを知り孤立せずに経験を分かち合えること、幼稚園・保育園や学校の理解を得て必要な支援をうけやすいこと、など役立つ点があります。

一方、「障害」という言葉で周囲の大人が悲観的になったり、状況を固定的に捉えることは、子どもの不安をあおり、自信を失わせることにつながります。正しい理解をもち、改善への見通しのもとに、安心して楽しい時間を多く持ち、自信を積み重ねていくことが、大きな成果をもたらします。

よくある「誤解」
  • 大人しいだけ。ほっておいても、そのうちしゃべるようになる。(早い時期からの支援が大切です)
  • おかあさんの心配しすぎでは?(園や学校から、こう言われることがよくあります)
  • 喋らないだけで、園や学校では問題ないですよ。(大人しく園や学校は困らないので、本人が困っていても見落とされ、放置されがちです
  • 家庭の愛情不足なのでは?(虐待やネグレクト環境で場面緘黙になる子は、ほんの一部です
  • 家庭で甘やかしすぎ、過保護なのでは?(古い研究にもとづいた誤解です)
  • 躾がなってない。(返事しないのは人を無視していると誤解されることがあります)
  • わがままなだけ。(場所・人・活動などの状況によって態度が変化する点や、こだわりがあり融通が利かない点を、わがままと誤解されがちです
  • わざと黙っている。(反抗的だと誤解されることがあります)
  • 緘黙は内気なはず、あんな気が強い子は場面緘黙ではない。(場面緘黙の子どもの性格は様々です)
  • 表情豊かなのだから、緘黙ではない。(非言語的コミュニケーションを豊かに出来る子もいます)
  • 自分から友達の輪の中に入るよう努力すべき。(本人の努力だけは改善は難しく、適切な支援が必要です)
  • 1人でぽつんといても平気そうだから、無視していい。(表情には不安が現れないことがよくあります
  • 話すように言うべき。(発話ばかりに注目しないことが大切です。話すようプレッシャーを与えると症状が悪化します)
  • うなづきや首振り、筆談を許していたら、甘やかしになる。(非言語的なコミュニケーションを十分行うことが、発話へのステップを進めます)
  • 特別扱いしてはいけない。(特別扱いではなく、十分な配慮と支援が必要です)
  • 少し喋れるんだから、場面緘黙ではない。(少し話せる場合、かえって周りの理解が得にくいことが多いです。少し話せる子にも、場面緘黙としての対応が必要です)
日本での現状

日本では場面緘黙の認知度が低く、支援や治療が遅れています。一般に知られていないために、こんな状態は自分だけだと思い、孤立を深めてしまいがちです。専門書としては1994年に河井芳文・河井英子著「場面緘黙児の心理と指導―担任と父母の協力のために 」田研出版が出版されていますが、1990年以前の研究に基づく内容です。病因について「過保護・支配的な母親」「無関心な父親」などという古い説が未だ流布しているため、多くの保護者が傷つけられています。

日本でも行動療法的なアプローチや遊戯療法、箱庭療法で症状が改善された例の報告があります。しかし、数は多くありません。2007年7月、Angela E.McHolm 他著の"Helping Your Child with Selective Mutism"の翻訳書「場面緘黙児への支援−学校で話せない子を助けるために−」河井英子・吉原桂子共訳が田研出版から出版されました。今後、認知度が高まってくることが期待されます。

「場面緘黙症Journal」の他にも、場面緘黙当事者や経験者また保護者などの個人ブログが多数存在し、認知度の向上や治療法の導入を望む声が多く聞かれます。「場面緘黙」は不安障害であるため、発話が可能になった後も、社会的場面で話すことが苦手な方が多いよう思われます。そのため、場面緘黙経験者にとって、インターネットは自分を表現するために活用しやすい、有効なツールとなり得るようです。

海外での現状

アメリカのスマートセンター(SMart center 場面緘黙 不安研究治療センター)やSMG〜CAN(場面緘黙グループ小児期不安ネットワーク)、イギリスのスマイラ(SMIRA場面緘黙情報研究協会)など、当事者・保護者・教師・専門家で構成された支援団体や専門治療機関があります。このサイトでは、スマートセンターとスマイラ等の配付資料、そしてそれらを元に作成した資料を公開しています。これら海外の団体には、配布資料の翻訳とウェブ上公開の許可をいただいています。

海外では保護者と密な連携を取りながら、教師と専門家が協力して緘黙児を支援していく統合的なアプローチ、薬物療法、年長では認知行動療法などが多く行われています。


テレビではABCニュース2006327日放映)CBSニュース20061116日放映)KETV-TV(2007年2月2日)でも取り上げられています。
The New York Times(2005年4月12日)やTIME(2006年1月29日)でも記事を掲載しています。(参考:場面緘黙症Journal記事

病因についても、現在は、不安になりやすい気質という遺伝的要因、発達的問題(感覚統合・表出性言語の障害など)や、環境要因(引越しや転校など)、言語スキルの問題(バイリンガル環境等)、などが、複合的に関係しているといわれています。アメリカでは、以前は「頑固」や「強情」であると誤解されることがよくありました。また、すべての場面緘黙が「虐待」「トラウマ」に関連付けられてきたという歴史もあり、メディアではその誤解を正そうという動きが活発なようです